オフィスの選択
迷いを解消
現在、起業にあたってはオフィスの形態が多様化しており、多くの選択肢が存在しています。中でも、レンタルオフィスとその派生形であるバーチャルオフィスが代表的です。
弊社はこれまで11年間、バーチャルオフィスを運営してきましたが、中にはバーチャルオフィスとレンタルオフィスの違いを理解していないために、代わりにレンタルオフィスを借り、高額な家賃を払って固定費用に悩むケースもあるようです。
バーチャルオフィスは、レンタルオフィスのサービスから発展したもので、最大の違いは物理的なスペースの有無です。レンタルオフィスでは、必要なデスク、ソファ、備品、冷暖房、空調、トイレ、水道などの設備を提供しますが、バーチャルオフィスでは物理的スペースを提供しません。代わりに、住所や電話番号などを貸し出して、その住所や電話番号を利用できるようにします。
そこで本記事では、バーチャルオフィスとレンタルオフィスの「費用」「サービス」「設備」「その他」について、初めて借りる方が気づかない17項目の違いを考察します。この記事を読むことで、レンタルオフィスやバーチャルオフィスの費用感、潜在的なリスク、デメリットを把握し、起業する際に最良の選択をすることができるでしょう。
バーチャルオフィス | レンタルオフィス | |
---|---|---|
費用 | ||
初期費用 | 高くても1万円 | 賃貸料の2-3ヶ月 |
月額費用 | 2000円~5,000円が相場 | 5万円~10万円が相場 |
保証金・現状回復 | 発生しない | 発生する |
設備 | ||
スペース | ある | ない |
会議室、応接室 | ある | ある |
固定電話機 | 利用できない。転送電話を利用 | 利用できる |
fax機器 | 利用できない。ネットFAXなど利用する | 利用できる |
その他 | ||
定員 | なし | あり |
立地 | 都心主要駅近く | 都心主要駅近く |
許認可が必要な業種の利用 | 利用できない | 利用できる場合の業種もある |
社員間コミュニケーション | オンライン中心 | 直接コミュニケーションがとれる |
銀行口座の開設 | 銀行判断による | 銀行判断(バーチャルオフィスよりは有利な場合がある) |
融資 | 金融機関の判断による | 金融機関の判断による(バーチャルオフィスよりは有利な場合がある) |
社会的信用度 | 都心の住所なので信用度は高い | 都心の住所なので信用度は高い |
ここでは「バーチャルオフィス」「レンタルオフィス」がそれぞれ提供するサービスの内容について比較して理解を深めていただきたいと思います。
まず、バーチャルオフィスとレンタルオフィスの「初期費用の違い」について考えてみましょう。
バーチャルオフィスの方が非常に安価で、レンタルオフィスに比べて1/10程度が相場となります。スペースを借りないため、当然といえば当然の話です。
レンタルオフィスを借りる場合は、通常の賃貸オフィスよりは安い場合でも、賃料の2ヶ月分や保証金などを支払う必要があり、最低でも10万円以上の初期費用がかかることが予想されます。
一方、バーチャルオフィスを利用する場合は、初期費用は高くても1〜2万円程度で済むことが多く、初期費用の面ではバーチャルオフィスの方が安価です。初期費用に大きな差がある点に注意が必要です。
ランニングコストである月額料金もレンタルオフィスに比べバーチャルオフィスの方が圧倒的に安い料金になります。
バーチャルオフィスは、東京都内でも月額2,000円~5,000円以内で使用できる場合が多いです。一方、レンタルオフィスの賃料はスペースにより異なってきますが、最低月額4万円台~10万円が相場です。
またこれとは別に共益費(トイレ、ガス代、水道代など)、電気代の負担があります。特に2022年後半より電気ガス代が高騰しているので 今後レンタルオフィスはさらに高くなる傾向です。
コストパフォーマンスだけ見ればバーチャルオフィスのほうが優れているでしょう。
結論から言えるのは、バーチャルオフィスでは「保証金」と「現状回復費用」は発生しないが、レンタルオフィスでは発生するということです。
通常、オフィスを賃貸する場合は、入居時に「保証金」を支払い、退去時には「現状回復費用」が発生することが一般的です。預り金として支払った「保証金」は、退去時には原状回復費用として差し引かれることになります。レンタルオフィスも同様で、保証金は一般的に賃料の1か月から2か月分となります。
保証金は返金されるものと思われがちですが、退去時には現状回復費用が発生するため、保証金は現状回復費用から充当されることが多く、入居期間が長ければほとんど返金されないことがあります。
一方、バーチャルオフィスではオフィスを借りないため、現状回復費用が発生しないことが一般的です。また、保証金に関しても、ほとんどのバーチャルオフィスでは徴収されない方針です。
ここでは付属の設備やサービスから見たそれぞれの違いについて解説していきます。
レンタルオフィスの場合通常のオフィス同様専有スペースがあります。仕事場として活用できますが、バーチャルオフィスは仮想オフィスということでスペースがありません。
まず、レンタルオフィスは、専有スペースがあります。つまり、自分専用のデスクや会議室などを借りることができます。このため、仕事場として活用することができます。
一方、バーチャルオフィスは、仮想オフィスということで、実際にスペースが存在しません。しかし、一部のバーチャルオフィスでは、時間貸しでスペースを貸しているところもあります。ただし、時間貸しなので、レンタルオフィスよりも高くなりがちです。
レンタルオフィスとバーチャルオフィスのどちらが適しているかは、個人のニーズによって異なります。例えば、家で仕事ができない方は、レンタルオフィスの方がいいかもしれません。一方、ビジネスアドレスや電話番号が必要なだけで、実際にオフィススペースを必要としない場合は、バーチャルオフィスが適しているかもしれません。
以上のように、レンタルオフィスとバーチャルオフィスは、それぞれの特徴を持っています。自分のビジネスに合ったサービスを選ぶことが重要です。
レンタルオフィスの場合ほとんどの会社は会議室があります。また無料で利用出来るケースが多いです。バーチャルオフィスの場合ほとんどの会社が会議室はありますが、中には無いバーチャルオフィスもあります。また有料になるケースが多いです。
レンタルオフィスでは通常のオフィスと同様に、固定電話を利用することができますそれに対してバーチャルオフィスでは 固定電話機が使用できません。
固定電話機に関していえばレンタルオフィスの場合通常の賃貸オフィスと同じです。NTTの電話会社と契約すれば、通常の固定電話を使用することができます。
しかし、バーチャルオフィスは実際にはその場所に存在しないため、NTTの電話会社と契約を結ぶこともできず、電話機を利用することもできないからです。
ただし、バーチャルオフィスの場合は、運営企業が転送電話サービスや電話代行のオプションを用意しており、固定電話機の代わりとして利用できます。転送電話は、携帯電話などに転送されるため、むしろ便利かもしれません。
上記の電話と同様です、レンタルオフィスの場合狭いので専有というよりかは共有でFAXを利用するケースが多いです。バーチャルオフィスの場合はインターネットFAXか、共有FAXでメール等に受信データが転送されるのが一般的です。
法人登記はレンタルオフィスでもバーチャルオフィスでもほとんどのところが可能です。
バーチャルオフィスの場合はプランにより法人登記が別料金の会社があります。
また気を付けなければいけないのが許認可が必要な事業の場合の住所です。人材紹介、人材派遣などの事業は許認可が必要です。事務所に細かい条件が必要ですがバーチャルオフィス届け出の住所にバーチャルオフィスは利用できません。
しかしレンタルオフィスの場合条件を満たしていれば届け出の住所に利用できます。
バーチャルオフィスを利用する場合、レンタルオフィスに比べ郵便物の受取りに時間がかかります。
レンタルオフィスでは、郵便受取ポストは他の会社と共有していますが、運営スタッフが仕訳して受付で受け取るため、ほぼリアルタイムで受け取れます。
しかしバーチャルオフィスでは、自分がオフィスにいないため、郵便物を取りに行くか転送を依頼する必要があります。そのため郵便物の受け取りにタイムラグが数日発生する可能性があるため、注意が必要です。
提供するサービス以外でも、実際に利用してみて初めてわかる違いがわかることもあります。 目に見えない「バーチャルオフィス」「レンタルオフィス」の利便性の違い部分を比較してみたいと思います。
レンタルオフィスには定員があり、キャパシティに制限があります。つまり、希望するオフィスがあっても、空き部屋がなければ入居することはできません。
また、契約が成立しても、現在入居しているテナントが退去するまで、すぐには利用できない場合があります。一方、バーチャルオフィスには定員がないため、すぐに利用することができます。
立地に関してはレンタルオフィスもバーチャルオフィスも違いはありません。傾向としてどちらも東京都内の駅近が多いです。ただバーチャルオフィスもレンタルオフィスも一等地になればなるほど費用が高くなる傾向があります
行政に許認可が必要な業種は例えば人材紹介、人材派遣、古物商、探偵業、不動産、行政書、司法書士などの士業などが挙げられます。 こういった許認可で提出する住所に「バーチャルオフィス」を利用することができません。
しかしレンタルオフィスなら条件が整っていればこのような許認可が必要な業種でも利用することは可能です。 もちろん各業種によってオフィスの要件が異なりますので、その点の確認は必要です。
バーチャルオフィスでの雇用は、リモート勤務を前提としたものです。
そのため、仕事の打ち合わせなどでも、LINE、Zoom、チャットワークなどのコミュニケーションツールを使うことが増えるため、コミュニケーションの密度が下がる可能性があり、業種や仕事内容によっては不都合が生じる場合があります。
一方、レンタルオフィスでは実際のオフィススペースがあり、社員がオフィスに常駐することができるため、コミュニケーションが円滑になり、業務の効率化が期待できます。ただし、社員の交通費などもかかるため、コストがかかることになります。
銀行口座開設については、「バーチャルオフィス」でも「レンタルオフィス」にかかわらず、オフィスの「ありなし」よりも、事業の実態など、会社がしっかりしているかなどが審査されるため、「レンタルオフィス」だからといって審査が通りやすくなることはありません(※銀行口座開設とバーチャルオフィスについてはこちらを参照)。
ただし、一部の銀行ではオフィスの「賃貸契約書」の提出を求められる場合があります。バーチャルオフィスは賃貸に該当しないため、「賃貸契約書」の提出が困難です。オフィスの賃貸契約書の提出が必須の銀行では、銀行口座開設ができない可能性があります。
銀行の融資においては、「バーチャルオフィス」や「レンタルオフィス」を利用しているかにかかわらず、創業したばかりの会社が融資を受けるのは困難です。なぜなら、金融機関は実績から信用を判断するためです。
バーチャルオフィスを利用している場合は、さらに信用度が低くなり、融資を受けられないこともあります。創業したばかりの場合は、日本政策金融公庫の「創業融資」が代表的な融資の一つですが、こちらでもバーチャルオフィスを利用していることが不利になることはありません。
ただし、面談など厳しい審査があるため注意が必要です。バーチャルオフィスを利用することで数万円で気軽に開業できますが、審査担当者から本気度が低く感じられる場合があるため、注意が必要です。
こうした点では、実体のある「レンタルオフィス」の方が事業の本気度をアピールすることができ、バーチャルオフィスよりも審査担当者に本気度をアピールできるため、審査が通りやすくなる可能性があります。
バーチャルオフィスもレンタルオフィスも一等地の住所を借りれば、同じように社会的信用を得る要素となります。 ただし、バーチャルオフィスの場合は住所からバーチャルオフィスであることが判明してしまった場合、信用度が下がらざるを得ないのでレンタルオフィスよりもリスクがあります。
人材採用の観点から言えば、応募者に人気のある会社は業種や職種を除いた場合に「綺麗なオフィス」「駅から近い」ということが挙げられます。特に女性の方は働く環境を重視する傾向にあります。
レンタルオフィスの場合、通常のオフィスより若干小さいスペースになりますが、綺麗なオフィスと設備が整っている場合が多いと言えます。
また、ゆっくりくつろげる共有ラウンジなどもある場合があるので、環境の部分ではレンタルオフィスは駅から近い所が多いため、パートアルバイトに関しては募集しやすいのではないでしょうか。
一方、バーチャルオフィスの場合、オフィスがないため求職者から信用度が低くなる可能性があります。しかし、最近では自宅で仕事する「リモートワーク」や「テレワーク」が一般化しております。テレワークを希望している求職者も多数いるため、人材採用に困ることはないと思います。
「レンタルオフィス」と「バーチャルオフィス」は、近年、多くの起業家や中小企業経営者にとって魅力的なオフィス選択肢となっています。しかし、どちらが自分のビジネスに適しているのかは、それぞれの特性を理解する必要があります。
まず、「レンタルオフィス」とは、通常の賃貸オフィスのように契約期間を定めることなく、必要な期間必要なスペースを借りることができるサービスです。借りるスペースのタイプは、個室型やブース型などがあります。一方、「バーチャルオフィス」とは、実際にオフィススペースを借りることなく、住所や転送電話番号などを利用して、ビジネスを行うことができるサービスです。
これらの違いを理解した上で、自分のビジネスに適した選択をすることが重要です。例えば、士業や古物商、人材紹介(派遣)など、許認可の届出用オフィスの要件がある場合には、レンタルオフィスを利用することが適しています。事前に要件を確認し、レンタルオフィスを選ぶことが大切です。
一方、形のない無形サービスや小さな商品を扱う場合には、バーチャルオフィスが適しています。また、ビジネスを開始する前に、オフィススペースを借りることに躊躇する場合にも、バーチャルオフィスが役立つことがあります。ビジネスがうまくいかなかった場合でも、最小限の費用で済むため、リスクが少ないことが特徴です。
さらに、コストパフォーマンスやメリット・デメリットを比較することも大切です。レンタルオフィスは、より豊富な設備やサービスを提供する場合がありますが、コストが高い傾向にあります。バーチャルオフィスは、コスト削減につながる一方で、顧客との対面接客などの面で効果が制限される可能性があるため、自分のビジネスに合わせた選択が必要です。